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3 眠り姫の起床

Author: 鈴田在可
last update publish date: 2026-04-29 20:01:23

 ――フィー、何があっても、永遠に愛してるよ

 耳に残るのは愛しい人の言葉だ。

 寮の自室でジュリアスに夜這いを仕掛けられ、それを受け入れて愛し合い、幸せに包まれながら直後に意識を落としたフィオナは、ジュリアスと、それからたぶん自分が生んだ一歳くらいのジュリアスに激似の赤子と一緒に、優雅なティータイムをしているという、夢の中でも幸せすぎる時を過ごしていた。

 ――……ベル、キャンベル、起きろ。起きろ、フィオナ!

 しかし不意に夢の登場人物以外の誰かに名前を呼ばれて、幸せな夢から浮上した。

 自分を呼ぶのは、ジュリアスに似ているが、彼とは違う、低くて渋さのある美声だった。

 名前を呼ばれたフィオナの目がゆっくりと開かれて、彼女の灰色の瞳があらわになる。フィオナはこちらを見下ろす、自身と同じ灰色の瞳を見た。

「隊、長……?」

 ベッドに横になっているフィオナの枕元にたたずんでいたのは、銃騎士隊の隊服を着た、ジュリアスの養父――とフィオナは思っ
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     愛しい婚約者に「眠りの魔法」をかけたジュリアスは、本来の姿に戻っているフィオナを抱きかかえ、とある場所に来ていた。  ここはフィオナと初めて結ばれた、海辺に近いキャンベル伯爵家の別荘だ。キャンベル伯領からは遠い地にあり、万一のことがあっても獣人王シドのいた里からは遠いため、彼女に危険が迫る可能性も低い。  現在は時期ではないために使用人も含め別荘に滞在する者はいない。無人の場所に一人無防備なままで残すことになる大切な恋人に、一切の危険がないようにと、ジュリアスはベッドに横たわらせた状態のフィオナの体の周囲に「盾の魔法」をかけた。  こうしておけば、大地震が来て家具が倒れたり強盗が入ってきて寝込みを襲われそうになっても、彼女は守られる。ジュリアス以外の人や者はフィオナには触れられない。 (フィーは俺だけのものだから)  もしも自分に何かあり迎えに来られず、札からの魔力が切れてフィオナが一人きりで目覚めたとしても、勝手知ったる実家の別荘ならば、フィオナ一人だけでもどうにかできるだろう。  続けてジュリアスはこの屋敷全体に「迷宮の魔法」をかけた。誰かが屋敷の中に侵入してきてもフィオナがいるこの部屋にはたどり着けない。  ジュリアスの魔法を破れるとしたら同じ魔法使いだけだろう。ジュリアスの知る魔法使いは、家族以外では『真眼』の魔法使いだけだ。今や敵同士となってしまったが、マグノリアの性格から考えると、よほどの事態にでもならない限りフィオナに危害を加えるようなことはしないだろう。  ましてマグノリアは今回の作戦の目的には反対しないはずだ。彼女は自分たちと同様に、シドは死ぬべきだと考えている。  ジュリアスは眠るフィオナの頬を愛しそうに撫でた。  ジュリアスがフィオナを強制的に眠らせてこんなことをしているのには理由がある。  獣人の里に潜んでいた弟シリウスから、獣人姫ヴィクトリアが里から逃げ出したという緊急の連絡が入った。シドは現在、我を忘れたかのようにヴィクトリアの匂いを追いかけているという。  事態が動いた。上手くいけばシドを捕まえることができるかもしれない。銃騎士隊全体で事に当たらなければならない大事な局面だ。  シドを相手にするならば、不測の事態が起こる可能性が高いし命の保証もないが、全ては覚悟の上だ。しかしフィオナ

  • 男装令嬢の恋と受胎~国一番の顔面偏差値を持つ隠れ天敵な超絶美形銃騎士に溺愛されて幸せです~   《受胎編》1 孕ませ 

     初めて結ばれて、海を見ながらプロポーズされた日から、もうすぐ三年が経過しようとしていた。「ジュリアス、あのね……」「うん? フィー、『おやすみなさい』かな?」 フィオナは恋人との時間を多く持つため、住まいを首都のキャンベル伯爵家のタウンハウスから、ジュリアスと同じ銃騎士隊員用独身寮に移していた。 夜、フィオナは隣のジュリアスの部屋にお邪魔して、朝までお邪魔を続けたかったが、読書に没頭しているらしきジュリアスは、エロ事よりも本の方が気になる様子で、その気ではないようだった。 ニコッと聖人のごとき清らかなる美しき笑みを向けられてしまうと、欲望をここで伝えるのも何だか違う気がして、フィオナは全身にくすぶる「今日は抱いてほしい」熱を、何とか抑え込もうと思った。 ジュリアスとは頻繁に体を重ねていたが、時々今回のように「エッチなことは全くしませんよオーラ」を出してきて、紳士対応をされてしまう時があった。「う、うん、おやすみ。また明日、ね」 フィオナは夜の挨拶をしてから、すごすごと、隣の広々とした貴族仕様の独身部屋に戻った。  ****** 三年前、男女の関係になった後すぐに、結婚を保留にしていたジュリアスの態度に変化が起こった。 いわく、すぐにでも結婚したいと。 しかし、そこから約三年経過しても結婚に至っていないのは、ひとえにフィオナ側に理由があった。 フィオナが銃騎士になったのは殺された家族の仇を討つためだ。あの獣人王と呼ばれているおぞましい赤髪の獣人を狩るまで。銃騎士を辞めるわけにはいかない。 結婚したらきっと子供も出来るのだろうし、銃騎士を続けるのは無理がある。ジュリアスからも、仕事中に一緒にいられるのは嬉しいが、危険がつきまとう仕事なのだからとそれとなく言われている。 危ない仕事を最愛の人にしてほしくないのはこちらも同じなのだが、銃騎士を相手に選んでしまった時点でそれは仕方のないことなのかもしれない。 いつまでも性別を偽り続けることはできない。 ジュリアスは無理を通して銃騎士になったフィオナの思いを汲んでくれて、「いつまででも待つ」と言ってはくれる。 国中の女たちが結婚したいと焦がれるような相手なのに、その男を待たせてしまっていることを申し訳なく思う。 どこかで区切りをつけなければいけないことは、フィオナもわかっていた

  • 男装令嬢の恋と受胎~国一番の顔面偏差値を持つ隠れ天敵な超絶美形銃騎士に溺愛されて幸せです~   30 結婚しようか 

    「あっ…… あっ……」 変幻の指輪を抜き取られて女に戻り、裸にされたフィオナの胸にジュリアスが吸いついてくる。もう片方の胸の先端も指先でピン! と弾かれると、これまでの営みでジュリアスに敏感に仕立て上げられていた乳首から、甘い快感が走って全身に広がっていく。 繰り返し指で弾かれ擦られる片側の乳首と、柔らかな熱い舌で転がされるもう片側の快感が共鳴して、やがて触られていない膣内が、まだ知らぬ肉棒をねだって収縮し始める。「きもちいい……っ もう、イく……」 快感に頭を焼かれそうになっていたフィオナは、絶頂が近いことを知らせながら全身を小刻みに震わせ始めた。すると、ジュリアスが胸をいじっていた手をフィオナの秘部に滑らせ、親指で勃起したクリトリスを刺激しながら、蜜壷の中に指を挿入してきた。「あぁっ! ああっ! イっちゃうぅっ! んああぁっ!」 ジュリアスの指で絶頂させられるのはいつものことだ。フィオナを知り尽くした彼の手で内側の良い所をトントンと刺激されながら淫芽を潰されると、フィオナはブシュッと潮を吹き出しながら達した。 絶頂に翻弄されている最中も、快楽の波から下りてきた後も、ずっとジュリアスは膣内を執拗にマッサージしている。フィオナはまたすぐ次の快感に体を押し上げられて、心の中はジュリアスに愛されている喜びでいっぱいになった。「フィー…… ごめんね、フィー……」 フィオナはこれから彼と一つになれるのが嬉しくて、その反動で明日世界が滅ぶのではないかと思ってしまうほどに幸せだったが、一方のジュリアスは、青い瞳に情欲の炎を灯しながらも、どこか罪悪感を抱えているような表情をしていて、おまけに謝ってきたのがとても気になった。「結婚できなくても、いいの。私はジュリアスとずっと一緒にいられるだけで幸せだから」 結婚できないことを後ろめたく思っているのではと思ったフィオナは、ジュリアスの気持ちを軽くしたくてそう伝えたが、彼は「ありがとう」と言って微笑みを返してくれたものの、完全に憂いが晴れたような様子でもない。「ジュリアス、ずっと思っていたの…… あなたは一体何を抱

  • 男装令嬢の恋と受胎~国一番の顔面偏差値を持つ隠れ天敵な超絶美形銃騎士に溺愛されて幸せです~   8 据え膳になるのよ、フィー!

     パタリとドアが閉まる。ジュリアスと案内役のギルバートの足音が遠ざかっていく中、話し合いの終わった室内にて、祖母キャスリンと二人きりになったフィオナは――「フィー! あの魚絶対に逃がすんじゃないわよ!」 先ほどまでの淑女然とした雰囲気から一転、フィオナの両肩を掴んだキャスリンは、クワッと目を見開き、勢い込んで話すが、あまりの勢いにフィオナはのけ反った。「さ、魚……」「とんだ大物よ! 彼はきっと大出世するわ! デキる男感がビシバシと伝わってきて、全身がシビレたもの! 彼だったらもしかしたら本当にシドを倒せるかも

  • 男装令嬢の恋と受胎~国一番の顔面偏差値を持つ隠れ天敵な超絶美形銃騎士に溺愛されて幸せです~   7 種

    「おばあ様は、フィル兄様が銃騎士になりたいと言い出した時に、許可を出されたじゃないですか! 『銃騎士隊との繋がりが増えるのは良い事だ』とも仰っていたじゃないですか!  フィル兄様は大丈夫で、どうして私は駄目なのですか⁈  フィル兄様は家を継ぐ必要がありましたが、私にはない…… 家を継ぐのはオル兄様。ならば、私は別の形で、この家を、この伯爵領を守りたいんです!」  フィオナが銃騎士になることを許可しない発言をしたキャスリンに、フィオナが食ってかかる。 「お前は伯爵令嬢、フィオナ・キャンベルなのですよ。お前の人生を犠牲にする選択を、私は肯定できない」  フィオナの情熱を、冷静さで受け止め

  • 男装令嬢の恋と受胎~国一番の顔面偏差値を持つ隠れ天敵な超絶美形銃騎士に溺愛されて幸せです~   6 VS女帝

     銃騎士養成学校入校試験の合格がわかってから数日後、フィオナは実家の伯爵家に戻っていた。 フィオナは入校試験の合格をジュリアス経由で聞いていたが、その結果自体はキャンベル伯爵家に送付されるそうで、その前に自分たちの口で伝えた方が心象が良いだろうとジュリアスに促されて、フィオナは合格祝いとして彼からプレゼントされたセンスの良すぎる婦人服を身にまとい、髪は短いが令嬢の姿で、実家に戻った。 フィオナはジュリアスと共に馬車で領地の伯爵邸に向かっていたが、もうすぐ着くというところで、伯爵家の美貌の使用人ギルバートに馬車を止められ、「フィー様ッ! よくぞご無事でぇぇぇー! ああああ私のフ

  • 男装令嬢の恋と受胎~国一番の顔面偏差値を持つ隠れ天敵な超絶美形銃騎士に溺愛されて幸せです~   5 俺を好きにならないこと

    「どうかこのことは内密にしてください! 私は銃騎士になって家族の仇であるあのおぞましき赤髪の獣人王をこの手で討ちたいのです! あなたが黙っていてくれるなら何でもしますし、あなたの下僕でも舎弟でも何にでもなりますから!!」 根が真っ直ぐなフィオナは、女バレを咄嗟に誤魔化すのではなくて、認めた上で自分の情熱を伝えた後に、口止めを願い出た。「黙っているのは君次第だけど、どうするつもりだったのかな?」 彼は自らを、ジュリアス・ブラッドレイと名乗った後に、そう尋ねてきた。 口調は年長者が年下に「悪さをしたのか?」と優しく問いかけるようなそれであるが、君次第だけどというところに、フィオナ

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